前回、学校での体験活動の欠如に触れました。体験の重要性は今さら感ありますが、何が問題かもう少し考えてみましょう。技術が進展して生活が便利になれば、社会生活が充実していきます。でも、例えば電車や車による移動手段が充実すれば、体をあまり使わなくなり筋力が衰えてしまうの例のように、生活の利便性が子どもの好奇心や手先を用いた作業などの機会を奪ってしまうことが起こりやすいのです。テレビのリモコンのボタンはどうでしょう。ボタン押せば電子的な作用によって反応が起こるのでとても便利です。しかし、それがどのような仕組みで成り立っているのか考えることはほとんどありませんし、直接的にその必要性もありませんね。仮にリモコンの中身を分解したとしても、高度な技術によって製造されていて、中身を見たかといってあまり手応えのある経験とはなり得ません。このように、普段の生活、身の回りにある物や技術から科学現象を体感する機会そのものが失われつつあるわけです。こういった環境にある現代の子どもたちに科学教育を施すのが大変になっているらしいことはご理解いただけるのではないでしょうか?高度にシステム化され、充実した生活にどっぷりつかっている現代の子どもたちの意欲を喚起させるのはなかなか骨の折れることになっているのです。かつての日本がそうであったように、現在発展途上にある国々の子どもたちが、ちょっとしたレンズ遊びや色遊びを演示するだけで目を輝かせて好奇心を高めることはそう難しいことではないでしょう。…次回に続く